カクテルコンペティション入賞者インタビュー

グランドニッコー東京 台場「The Grill on 30th」のスタッフ、松丸友哉。
先日開催された、HBA東京支部主催「第13回 創作カクテルコンペティション
“Dear Tokyo~カクテルで紡ぐストーリー~” GI「東京島酒」でおもてなし」で見事、総合3位に輝きました。

初めての挑戦でありながら結果を残した背景には、日々の練習や支えてくれた上司・先輩の存在、
そして松丸さん自身の成長がありました。今回、その挑戦の裏側や学びについてお話を伺いました。

PROFILE

プロフィール

グランドニッコー東京 台場
The Grill on 30th
松丸 友哉

2021年グランドニッコー東京 台場に入社。料飲部レストラン・バー課 ガーデンダイニングに配属。
2022年The Grill on 30thに配属。

レストランスタッフとしてサービススキルを磨きながら、併設のThe Bar & Loungeで研鑽を重ね、
2024年HBA東京支部主催「第13回 創作カクテルコンペティション “Dear Tokyo~カクテルで紡ぐストーリー~” GI「東京島酒」でおもてなし」に初出場し、総合3位を受賞。

きっかけは「これからバーテンダーをやっていくなら大会に出てみたら?」という上司の言葉でした。私にとっては大きな挑戦でしたが、そのひと言に背中を押され、初めてコンテストに参加することを決めました。
調べてみると、前回大会はコロナ禍の前で、そこからしばらく間が空いていたことを知りました。久しぶりの開催だとわかり、挑戦してみたい気持ちが強まっていきました。

今回の作品名は「東京 KANNMI ~島酒と和種が織りなすハーモニー~」です。カクテル名は「東京甘味」。その名の通り、東京をテーマに“甘味”を表現した一杯です。


大会のルールとして、東京の島酒を1つ使用することが決まっていました。自分は八丈島産の麦焼酎「麦冠 情け嶋(ばっかん なさけしま)」を選びました。麦の香りがとても強い焼酎で、最初はカクテルに使うのは難しいかもしれないと思ったのですが、だからこそ挑戦してみたいと考えました。


コンセプトは「東京を紡ぐ」。東京の下町をイメージし、クリームあんみつのような甘いデザートをカクテルで表現したいと思い、小豆の和酒を合わせました。
麦焼酎の力強さと和酒の甘みを組み合わせることで、“和の甘味”を感じられる一杯を目指しました。
私自身初めての大会だったので、名前やコンセプトは上司や先輩にも相談しながら決めていきました。

最初は何から取り組めばいいのかすらわからない状態でした。シェイカーの持ち方しか知らない状況で、上司や先輩のもとで一から学んでいきました。
練習は1か月半から2か月ほどで、ほぼ毎日先輩に見てもらいながら行いました。カクテルは振り方ひとつで味のまとまりが変わってしまいます。
振れていないと味がバラついてしまいますし、逆に振りすぎると水っぽくなる。そのバランスを掴むまでには時間がかかりました。

また、動作や所作の細かいところも厳しく指導を受けました。動画を撮って自分の動きを見返すと、姿勢や仕草が整っていない部分が多く、「どんな場面でも見られている」という意識を持つことの難しさを痛感しました。

初めての大会で苦労の連続でしたが、信頼できる先輩たちに毎日根気強く教えてもらえたことで、挑戦を前向きに続けることができました。「この先輩たちに指導してもらえている」という安心感が支えになり、乗り越えることができたと思います。

出場者は30人近くで、1部・2部に分かれてアイランドカウンター方式で行われました。


当日は約500名のお客様が来場し、その中で投票に参加してくださった方々と審査員の評価によって一次審査が行われました。一次審査は、1部・2部での最多投票者各1名と、審査員の得点で選ばれる8名を合わせた合計10名がファイナルに進む仕組みです。


私は1部に出場し、来場者投票で最も多くの票をいただき、ファイナルに進出することができました。
一次審査では、とにかく呼び込みをして一人でも多くの方に飲んでいただき、このカクテルを知ってもらうことを意識しました。
初出場でテクニックも十分ではないと思っていたので、「ファイナルに残るには投票しかない」と考え一次審査に挑みました。

自分の名前が呼ばれたときは、総合3位に入るとはまったく想像しておらず、本当に驚きました。


一緒に練習を支えてくださった上司や先輩も、思っていた以上の結果に目を丸くしつつ、とても喜んでくださいました。
家族も当日会場に来ていて、入賞が決まった瞬間には歓喜の涙を流してくれました。
普段の練習の様子を見ていた同僚から「おめでとう」と声をかけられると、さらに嬉しさがこみ上げてきました。

受賞できた理由を振り返ると、まずは上司と一緒に考えたレシピや味の完成度です。そして、本番で過度に緊張せず、今までの練習を思い出して自信を持って臨めたことも大きかったと思います。
自分ひとりで掴んだ結果ではなく、周囲の支えがあったからこその受賞でした。

自分の中で一番大きく変わったのは「自信」です。
これまではカクテルをつくる技量に不安がありましたが、練習や本番を通して力がついたことを自分でも確信できました。
特に基礎のフォームを徹底的に指導していただいたことで、一つひとつの動作が洗練されたように感じています。

また、「常に見られている」という意識も強くなりました。バーカウンターに立つとき、目の前のお客様は会話や夜景を楽しまれていることも多く、私自身をご覧になっていないこともあるのですが、コンテストでは何百人ものお客様や審査員の視線を感じながら一杯を仕上げます。
その経験を通じて、普段の業務でも姿勢や仕草により気を配れるようになったと思います。

そして何よりも、この挑戦をきっかけに「もっと大会に出たい」という気持ちが強くなりました。
今回初めて挑戦して入賞できたことを糧に、別のコンテストへのエントリーも進めています。

大会を通じて得られる知識や技術は私自身の仕事にも活かせますし、今後は後輩の育成やサポートにもつなげていきたいと思っています。
自分が学んだことを伝え、次の世代のバーテンダーの力になれるように取り組んでいきたいです。

もし迷っている方がいれば、ぜひ積極的にチャレンジしてほしいです。大会を通じてメンタルも鍛えられますし、新しい知識や技術も身につきます。
もちろん緊張や大変さはありますが、その場の空気を楽しみながら取り組めば、必ず成長につながると信じています。

バーテンダーとしてスキルアップできると、カウンターに立ってお客様とお話しする機会がさらに増え、カクテルを作る楽しさや魅力を改めて感じられます。
ホテリエとしても人としてもきっと貴重な経験になりますので「コンテストへの挑戦」を私は自信を持っておすすめしたいです。